CBS Magazine vol.7
7/16

Kisho Obi-Nagata, Norimitsu Suzuki, Ryuhei Miyake, Matthew L. MacDonald, Kenneth N. Fish, Katsuya Ozawa, Kenichiro Nagahama, Tsukasa Okimura, Shoji Tanaka, Masanobu Kano, Yugo Fukazawa, Robert A. Sweet, and Akiko Hayashi-Takagi, "Distorted neurocomputation by a small number of extra-large spines in psychiatric disorders", Science Advances, 10.1126/sciadv.ade5973Cutting-edge Research■ 「実験はほとんど上手くいかない」を知った上でのチャレンジ「医学部出身の小尾さん、研究者を志すようになったきっかけを教えてください。」小尾:お医者さんになるつもりで群馬大学の医学部に在籍していました。学部時代に別の研究室で脳梗塞の研究をしたのですが、実は臨床が始まって忙しくなる前に研究ってどういうものなのか、ちょっと経験しておこうというくらいの気持ちで始めたのです。その時、研究って面白いなと思ったのが一つのきっかけですね。でも研究に進むかどうか、学部6年生まで迷っていて。どこまで自分が研究者としてやれるのか分からないし、医者になりたい自分もいた。もし研究を続けるなら興味があった精神疾患を研究したいな、と思っていたところで、林先生とお会いする機会がありました。群馬大医学部の大学院には、研修医と大学院を同時並行で進められるプログラムがあります。研修医として臨床を経験しながら精神疾患研究のスペシャリストである林先生のラボで研究ができるならいいなと思って、先生にご相談したら「いいですよ」と言っていただいたんです。「そのとき林先生はどんなアドバイスをされましたか。」林(高木):とにかく実験しなさい、と。若い人の中には、意識は高いけれど頑張りきれない人もいます。実験ってほとんどは上手くいかないので、簡単にくじけてしまうようでは続けられない。「その辺、覚悟ができているならいいよ」というようなことは言いました。ちな■ 「原理的にはできるはず」の神業級実験を積み重ねて見出した巨大スパインの機能「今回の成果を簡単に説明していただけますか。」小尾:脳では膨大な数の神経細胞がネットワークを構築していて、シナプスと呼ばれるつなぎ目を介して情報のやりとりをしています。一つの神経細胞には約1万個ものシナプスがありますが、そのうちの1個でも入力があれば必ず神経細胞が活動する訳ではありません。通常は多くのシナプスから協調的に、ほぼ同時に情報が入力することで神経細胞が活動するので、この仕組みをみにそのまま医者になっていたとしたら、行きたかった科とかあったの?小尾:外科に興味がありました。手を動かすのが好きでしたね。ただ研修医時代は精神科も含めいろんな科を回ったけれど、医者として患者さんを助けたいと思ってもできないことも多く、患者さんの求めに応じてできる医療を提供するよりほかないのがすごくもどかしかった。研究は自分の仮説に基づいて実験を組んで、とアクティブに取り組むことができる。自分はそういう方が向いているのかもしれない、と思ったのも研究の道に進んだ理由の一つですね。多階層精神疾患研究チームチームリーダー 林(高木)朗子, M.D., Ph.D.未来を思い煩うな。必要あらば現在役立ちうる知性の剣にて十分に未来に立ち向かわん。 「自省録」マルクス・アウレリウス客員研究員 小尾(永田)紀翔, M.D., Ph.D.

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る