CBS Magazine vol.7
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202405-3000「ローマ帝国五賢帝時代の最後の皇帝、マルクス・アウレリウス・アントニヌスが寝る前に、『ああ…今日、やっちゃったな』という反省と自戒を込めて書いた日記をまとめたものです。もともと彼はストア派の哲学者で、哲学の原理原則は分かっているのに日々の生活では実現できなくて『今日、いらっとしちゃったな』『何でみんな、分かってくれないんだよ』というような生々しさが書かれています。3冊紹介しますが、おのおの訳者ごとにテイストが違います。これを読んで理解してほんの少しでも実践したら、世の中から戦争はなくなると思います。全人類が読むべき本です。」豊川 航, Ph.D.理研CBS-トヨタ連携センター(BTCC) 計算論的集団力学連携ユニット ユニットリーダー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」アンディ・ウィアー 著、小野田 和子 訳、早川書房 2021年「人生のいろんな折に触れて、僕が影響を受けた本ってもちろん沢山あるんですけど、一昨年前に読んで『正にそうだよな』と思ったSF小説を紹介します。宇宙人とインタラクションするお話なんですが、宇宙人の個体を形作っている生理的なメカニズムというか、物質的な意味でのケミカルなリアクションとか、構成している化学物質自体は全然私たちと違う、という設定です。タンパク質とかじゃない、メタルか何かでできている身体なんです。でも、文化を持っている。インタビューでも言いましたけど、文化を持っているということは、模倣ができて、要するにコミュニケーションしている訳です。コミュニケーションができるってことは、そこにはロジックが絶対あるんですよね。ロジックというのは、地球のここで成り立っているならば、基本的に宇宙の果てでも成り立っている。未知の宇宙人との交流の様子が描かれているんですけど、その交流をとおして、コミュニケーションとは何かとか、知性とは何かとか、考えさせられます。解くべき問題とかコミュニケーションの問題がある時に、それをどう解くかは、計算を実装できるのであれば何でもよくて、脳じゃなくてもよくて、もし何かしら別の方法で実装できたら、それでコミュニケーションできる訳です。僕も一般知性とか、生命とか、社会とは何かみたいなことを考えるのですが、この小説にすごく刺激を受けた。人間のこの身体は実は本質じゃないんじゃないかな、って思いましたね。わくわくして読みました。作者が書き手として優秀なので、軽い読み口というか、読んでいて楽しいし面白い書きっぷりだし、良い小説です。」「人間性の進化的起源」ケヴィン・レイランド 著、豊川 航 訳、勁草書房 2023年竹岡 彩, Ph.D.運動回路可塑性研究チーム チームリーダー 「妻を帽子とまちがえた男 -“The man who mistook his wife for a hat”」オリヴァー・サックス 著、高見 幸郎 ・ 金沢 泰子 訳、ハヤカワ文庫 2009年「これが一番好きな本という訳ではないんですが、学生の方にお勧めする本として、オリヴァー・サックスの“The man who mistook his wife for a hat”を紹介します。私が大学1年生の時、神経学の授業で先生がこの本の話をしたのがきっかけで、読みました。オリヴァー・サックスは脳神経科のお医者さんで、実際に診られた患者さんの、『こんなことあるの?』と思うような面白い症例が載っています。高校生とか大学1年生とか若い人が読んだら神経科学に興味が湧くのではないかなと思います。」小尾(永田)紀翔, M.D., Ph.D.多階層精神疾患研究チーム 客員研究員 「四月は君の嘘」新川 直司 著、講談社(コミック) 2011年「母親の指導のもと世界的ピアニストを目指していた主人公の少年は、ある出来事をきっかけにピアノの音だけが聞こえなくなり、ピアノから遠ざかってしまいます。その少年がバイオリニストの女の子と会って、またピアニストとしての一歩を踏み出す、というお話です。アニメ化や実写化されましたが、原作がとてもいいので、ぜひ漫画を読んでいただきたいです。」林(高木)朗子, M.D., Ph.D.多階層精神疾患研究チーム チームリーダー「超訳 自省録 よりよく生きる」マルクス・アウレリウス 著、 佐藤 けんいち 編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019年「自省録」マルクス・アウレーリウス 著、 神谷 美恵子 訳、岩波文庫 2007年「100分de名著 マルクス・アウレリウス『自省録』」岸見 一郎 著、NHK出版(テキスト) 2019年4月研究者の本棚

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