CBS Magazine vol.5
13/16

「RIKEN BSI(RIKEN 脳科学総合研究センター:RIKEN 脳神経科学研究センターの前身)主催のサマープログラムに参加した経験があるそうですね。」「ポルトガルでの生活はいかがでしたか。」「“Neuron”に発表された研究*1の内容について教えてください。」すね。酒井抱一はすごく上品で、「十二ヵ月花鳥図」のような落ち着いた感じの絵が好きです。クラシックが好きになり始めたのは、モーツァルト生誕250周年の時にNHKで放映していた、毎日モーツァルトの曲を紹介する番組がきっかけですね。今でも一番好きな作曲家はモーツァルトです。最近はエレーヌ・グリモーさんというフランス人ピアニストが弾くブラームスのピアノ協奏曲1番、2番が好きで、YouTubeで100回以上は聞いています。博士課程3年生の時にインターンシップコースに参加しました。風間北斗先生のショウジョウバエの研究に興味があって、技術も身に着けたいな、と。そこで様々な国から来た仲間と出会い、英語で話すという貴重な経験をしました。仲間と出かけて話をするのがすごく面白くて、毎週のようにみんなをいろいろな観光地に連れて行って。この経験がなければポスドクで海外に行っていなかったと思います。ショウジョウバエを使って遺伝子組み換え技術を駆使して、神経回路の機構を神経細胞レベルで解明したい、と思ってポスドクも最初は国内で探していたんですが、国内には研究したいテーマに合う研究室が当時は少なかったのと、インターンシップでいろいろな国の人と交流するのがものすごく楽しかったのもあり、海外に行くしかないな、と。ポルトガルを選んだのも偶然でした。最初にポスドク採用面接を受けた研究室は残念ながら縁がなかったのですが、その研究室主宰者が、「新しく研究室を始めた人がいるから」とポルトガルのシャンパリモー センターのオーヘイニャ・キアぺを紹介してくれました。さらに、BSIのインターンシップにもたまたまシャンパリモー センターからの参加者が二人いて、その子たちからも新しい研究室ができたよ、と聞いていたんです。その両方からの紹介があって、ポルトガルの研究室を受けてみようと思いました。ちょうどオーヘイニャもポスドクを探していた時だったのでタイミングも良くて。最高でした。僕は土日も結構真面目に研究していたんですけど、他にはドイツ人とかがチラホラいるだけで基本的に休日はガラガラ。でも僕にはそれが良くて。東大にいた時、周りがみんな優秀でガシガシやる人たちばかりでプレッシャーを感じたりもしてたんですけど、ポルトガルの研究所は一流の環境なのにとてもリラックスした雰囲気で、他の研究室の人も助けてくれて親切でした。日常生活でも、気候は良いし人もみんな温かくて、全然知らない人に「お前、日本人か。じゃ、ビールおごってやろう」って言われて、すぐ友達になれるんですよね。研究所の所長もすごく気さくな人で、数か月に一度はダンスパーティーを研究室主催で企画して、そこで他の研究室の人たちと仲良くなるんです。何の研究をしているか知らないけどすごく仲が良い、って人も結構いました。研究室で一番重要と言われていたイベントがビヤアワーで、金曜日の夕方5時半からおつまみとビールでワイワイガヤガヤして、夜9時ごろに終わる。すると今度は街に出て夜中の12時位までゆっくりディナーをとって、その後パーティー会場に行って朝までダンスする。日本にはなかなかない機会で、最高に楽しかったです。日本に帰る時も飛行機に乗る2時間前までパーティー会場にいました(笑)もともとヒューマノイドロボットを作りたいと思っていましたが、言い換えれば私たちの脳がどうやって体の運動をコントロールしているのか知りたいということです。腕を伸ばすといった単純な運動でも非常に複雑な神経計算が必要で、これがどうやって行われているのか、というところに興味がありました。これまでの論文では大まかなタイムスケールで、例えばハエの歩行の速度という抽象的なパラメータと神経活動がど

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る