CBS Magazine vol.8
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Cutting-edge Research分かっていない。その辺の解明も進めていきたいなと考えています。■ 髪型で実験の進捗がわかる?「今回の研究で苦労した点はどこですか。」大内:苦労したのは、私の実験の技術を保つことです。毎回、新しい電極を使わせていただけるんですけど、1個がとても高額なんですよ。藤澤:緊張する(笑)大内:毎回、すごいプレッシャーです。それもあって、私、実験を失敗したときは髪を切ると決めているんです。だから、私の髪型見たら、実験の進捗が分かります。あ、最近、失敗したのかなみたいな(笑)やっぱりきれいな電極を使ったほうがきれいなデータが取れるので高額でも使わせていただけるのはありがたいのですが、信頼していただいているのも逆に少しプレッシャーで。「ちなみに今まで失敗して髪を切ったことはあるんですか。」大内:あります、あります。髪に厄がたまるような感じもあって、バッサリ切るのが割と好きでもあるんですが、気合を入れて次に行こうという気持ちでバッサリ切ります。何か、心が軽くなるような感じがするので。藤澤先生は切り替えのルーチンみたいなものはありますか。藤澤:いや、特にないですね。寝るぐらいですかね。結構寝ていますよ。ドジャースの大谷翔平選手ほどではないですけど(笑)「藤澤ラボからの論文は筆頭著者と藤澤先生、というものが多い印象です。基本、1人1テーマなんですか。」藤澤:そうですね。逆に1人2テーマとかもあります。筆頭著者として1人で全部やってもらうというのが基1次元でも神経活動の情報を切り取れるようにするために、向かいあった柵の2か所に水ポートを置き、その2か所の間を往復すると報酬(水)をもらえるような課題にしました。水ポートの位置を移動することでスペース全体を動きまわるようにしています。ラットは覚えるまでにちょっと時間がかかりますが、2週間ぐらいで、割と真っすぐに走ってくれるようになります。大内:私たちが発見した予測的格子細胞の活動パターンは、ラットの進行方向を分けないで解析すると、格子状の活動パターンには見えないんです。でも例えばラットが北から南に進むときだけの発火率マップを切り取ると、数十センチずれて格子細胞みたいに発火していたんです。藤澤:進行方向ごとに切り取ったときに活動パターンが格子状、グリッドだったというのは、お互いに大きな驚きでした。一番初めに取れたデータがすごくきれいでびっくりしました。そこからなかなか取れない時期があって、ちょっと苦労しましたけど。大内:グリッドが見えた瞬間、すごく興奮した半面、「大丈夫か?ちゃんと再現性を取らないと」って結構、プレッシャーを感じました。喜びよりは、追加のデータをしっかり取っていかないとだめだぞ、落ち着け、落ち着けみたいな感じでしたね。「予測的格子細胞は動物が自由に動くときも活動するのですか。またヒトにもあるのでしょうか。」大内:柵から水の報酬を出さずに、動物が自由に動いたときでも同じように活動します。だから、動物が何か期待をして動いたときということではなく、単純に位置的に「次、ここに行くぞ」というものが計算されているということなんですね。それから今回私たちが発見した予測的格子細胞はヒトにあるのか、ということですが、これはラットで発見したばかりなので、現時点では「ヒトにもある」と断言はできません。しかし、現在の位置の座標情報を表す格子細胞については、ヒトやコウモリなどの哺乳類でもあると言われていますので、予測的格子細胞がヒトにもある可能性は高いのでは、と思っています。「ちなみに格子細胞や予測的格子細胞は、どうやって空間のグリッドを認識しているんですか。」藤澤:それがまだ分からないんですよね。世界を基軸にしているのが嗅内皮質の格子細胞です。動物の頭の向きを感知する細胞や動物のスピードを感知する細胞などから情報が入ってきて、嗅内皮質で統合されているらしいとはいわれているんですけど、仕組みはまだ

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