CBS Magazine vol.8
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Focusing on a subjectクの価値をさらに上げるための手段として、MRIの高度化というのはすごく大事になってきます。先程岡田先生がグルタミン酸やGABAを測るという話をしていましたけど、昔はこれを1回撮るのに10分位かかっていた。それが今は7テスラなら数秒で撮れるレベルまで進歩している。するとニューロフィードバックを用いて被験者が脳内のグルタミン酸やGABAの量を自分でコントロールすることができるかもしれない。グルタミン酸とGABAの比率って、学習に関係があるんです。例えば、運動野のグルタミン酸を増やしてちょっと学習が進みやすくなる状態にするとか、そういうフィードバックを作れるんじゃないかと試行錯誤しています。7テスラでなら実現できるんじゃないかとか、夢の広がる話がいっぱいあります。■ 取材日:2024年9月27日体をコントロールして相手の股の間にボールを通すということをしなきゃいけないんです。試合中はゆっくり考えている暇もないのに、高度で難しい認知・運動制御が、意識のほぼ伴わない状態でできてしまう。メッシ選手は「練習中はいろいろ考えているけど、試合中は体が動くのに任せる」って言うんですよね。つまり、無意識的な脳の情報処理や運動制御に任せている。では、どうやってその無意識のシステムに高度な技能を教え込めるのか。直観と言ってもいいかもしれないけれど、さらにその前、直観による高度な認知・運動制御を実現する脳状態がどのように作られるか、ということに興味があります。でもMRIの中で激しい運動はできないのでサッカーは難しい。そこで最近興味を持ったのがラップバトルです。0.1秒とかものすごく短い間に、相手が言ったことを理解して反応する。しかも韻を踏みながらビートに乗って言い返すということをしていて、異常な能力なんですよ。考えていたら絶対できないし、一体どうやってやっているのかも分からない。多分MRIの中でもできるだろうから実験はできそうですね。ビートに乗っちゃうから体が動くかもしれないけど、ガチガチに頭を固定して(笑)韻を踏むとか、フリースタイルラップのバース(ラップのいわゆる「Aメロ部分」のこと)が出てくる源泉としての脳の仕組み、そういうすごい能力が潜在意識から出てくる仕組みを調べたい。僕らが普段コントロールできないと思っている能力を、どうやったらコントロールできる状態に持っていけるかといった話にもなってくるので、そうなると社会的にも意義がある。ここで重要になってくるのが、直観とか潜在意識に関わっている脳部位で、特に基底核などの普段MRIで撮りにくい部位の活動をもっと見れるようにしたい。大脳皮質もより細かく見たい。大脳皮質は6層構造をしていて、3ミリくらいの1枚のシートみたいになっている。3テスラMRIだと信号の一つのさいの目がちょうど3ミリなので、脳の6層全部が一つの信号として検出されちゃう。それが7テスラになると1ミリくらいで見ることができるので、大脳皮質の6層の上部からと下部からの信号くらいは見分けることができる。大脳皮質の上部と下部では役割が違うと言われているので、それぞれの活動を見分けることができると、新しく分かってくることも多いはずです。僕がやっているニューロフィードバック(脳活動計測とAIを組み合わせ、ユーザーが自分で自分の脳活動変化を誘導する)でも、上の回路、下の回路、のような回路単位で脳活動変化を誘導できるようになる。ニューロフィードバッ

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