シバタ カズヒサ ■ 東京都出身。奈良先端科学技術大学院大学 博士(理学)取得修了。名古屋大学 准教授等を経て、2019年9月より現職。信条は、「なんでも面白がってみる」。Focusing on a subjectが、すぐにRIKEN CBSの研究室主宰者(PI)の募集が出てしまいまして(笑)RIKEN CBSになって最初の募集でした。僕は東大、京大、阪大なんかのすごい人たちと真っ向勝負したら、まず敵わない。だから、みんながまだ応募してこないであろう一発目の募集にとりあえず応募して、幸運にも採用されました…あまり後進の参考にならない話ですね(笑)岡田:そういう意味では、私の話も真っ当なコースからすると全然参考にならないですね(笑)柴田:CBSのPIはけもの道を通ってきた人が多いので、いろいろ面白い。「今現在、どのような研究をしているのですか?」岡田:私は、研究者を支援する機能的磁気共鳴画像測定支援ユニットという立場上、MRI装置での計測がどの程度安定しているかとか、新たな計測を行うにはどうすれば良いのかとか、そういったことが研究の主軸となります。今は最新の7テスラMRI装置をどう使うのか、というところが最大の関心事です。テスラというのは静磁場強度なんですけれども、解像度についていえば今広く使われている3テスラに対して7テスラは2.7倍ぐらいのアドバンテージがある。そう考えると、例えば、今3テスラでは1ミリ四方の立方体で脳を撮っているとすると、それが7テスラだと4分の3ぐらい、0.75ミリまで小さくしても同じぐらいの信号強度になるという話なんです。そのアドバンテージを最大限に生かすような撮像方法とか、最近ではAIによる深層学習を使った画像再構成の手法を使うことでもう少し頑張って0.5ミリ四方で撮れるのかとか、そういった基本技術を確認しなきゃいけないと思っています。それに、3テスラから7テスラに上がると、脳内で働く物質を分けて可視化できるようになります。神経伝達物質でいうと、今までもグルタミン酸はある程度見えていたんですが、MRスペクトロスコピーという手法によって、これまで難しかった抑制系神経伝達物質のGABAも比較的安定して見えるようになる。MRIってものすごく柔軟性が高くて、いろんなパラメータを設定してやることで、コントラストや得られるものを変えることができます。自由度が高い分面白いんです。これは無理だろうというところも上手く調整していけば、最新の面白いことができる。柴田:本当に、パラメータの海、みたいな感じですよね。と書いてある。このアプローチがとても工学的で、工学部出身でも脳の研究はできるんだなと。それで奈良先端科学技術大学院大学に入り、連携講座で川人先生のいる国際電気通信基礎技術研究所に行って、ヒトの脳研究をやりはじめました。僕はfMRIとMEG(脳磁図。脳の電気的な活動によって生じる磁場を計測するイメージング技術)の両方を使っていました。fMRIは遅いんですけど脳のいろいろな所が細かく撮れて、MEGはあまり細かくはないけどミリ秒単位で早く撮れる。その二つを合わせて脳の活動を推定するという手法の研究から入って、ヒトの計測を始めてからは潜在意識とか、意識の及ばない脳の情報処理にすごく興味を持つようになった。それからだんだん心理学に傾倒して、博士論文の内容は計算論と、脳機能計測と、心理学と、神経科学のごった煮でした。そこからボストン大学で3年半、ブラウン大学で3年半、いろいろやりましたが、よく知られているのは行動実験と脳計測とを合体させ、自分で自分の脳活動を変えるというニューロフィードバックとよばれる技術の新バージョンを作った研究です。2016年に帰国して名古屋大学で准教授になり、教えるのも結構好きで楽しいなと思っていたんですけど、忙しすぎて研究もなかなか難しいから、2018年に量子科学技術研究開発機構に移りました。よし、じゃあ、ここで腰を落ち着けて研究をするぞ!と思ったのです柴田 和久, Ph.D.チームリーダー人間認知・学習研究チーム
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