オカダ トモヒサ ■ 岡山県出身。京都大学大学院 医学研究科 画像診断学・核医学専攻 博士(医学)取得修了。京都大学大学院 医学研究科 附属高次脳機能総合研究センター 准教授等を経て、2024年4月より現職。信条は、「やってみなければわからない」。Focusing on a subject研究基盤開発部門(RRD)機能的磁気共鳴画像測定支援ユニット理化学研究所 脳神経科学研究センターでは、2022年に7テスラMRIを導入しました。以前から取り組んできたヒト脳の研究が、一段と進む予定です。MRI研究における技術開発の黎明期を知る岡田知久ユニットリーダーと、MRIを用いて潜在意識の研究に精力的に取り組んでいる柴田和久チームリーダーにお話を伺いました。「お二人のキャリアを教えてください。」岡田:私はもともと東京大学に行って、どこかコンピュータ関連の会社に入りたいなと思っていたんですよ。ただ若い頃でもありもう詳しくは覚えていませんが、精神医学的なことにも興味があったのか、なぜか医学部に入ってしまったんです。柴田:なぜか医学部に入ってしまったって、あまり聞かないですね(笑)岡田:まぁ、そうなってしまって(笑)学部を卒業して、どの科に進むか考えた時に、やっぱりコンピュータが使えるようなところがいい、ということで放射線科に入った。それがちょうどMRI装置が臨床に導入されて広がりつつあった頃なんです。当時の最先端の技術で非常に興味深かった。研修医として5年間病院で働きまして、1995年に大学院へ帰ってきた時にはEPI(エコープラナー法)撮像ができるようになっていたんです。EPIというのは、MRIを使って一瞬で頭のスライス画像を撮ることができるという方法です。 EPIのおかげで脳の活動に関連した血流動態反応を視覚化し、特定の機能でどの脳部位が活動するかを測定する機能的MRI(fMRI:MRIを利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の神経活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つ) の技術の開発が進みまして、私もfMRIの実験をしようと、日曜日に病院のMRIを使わせてもらって研究を続けていました。ちょうどその頃、生理学研究所に定藤規弘教授が担当するfMRI関連の研究部門ができ、そこに就職しました。5年ほど定藤ラボにいてその後神戸先端医療センターに移りました。そこはPET(陽電子放出断層撮影)の診療を進めていて、大いに勉強させていただきました。それから旧神戸中央市民病院に移って1年半ぐらい診療をやっていたら京都大学から連絡がありました。その当時、まだMRI装置は1.5テスラ(テスラ:超伝導磁石の静磁場強度)がメインだったのですが、あまり普及していない3テスラを企業と組んで開発するとのことで、京大病院 放射線科に移りました。いろいろと教えていただくことも多くて、MRIの原理からとても勉強になりました。勤続10年を過ぎた時に、今度は7テスラという非常に磁場強度の高いMRIが脳機能総合研究センターに導入されたので管理を含めて8年担当したんですけれども、最新の7テスラ装置が理化学研究所 脳神経科学研究センター(RIKEN CBS)に導入されたので、和光に来ました。柴田:すごいですね。脳機能画像法の黎明期とキャリアが一致している。僕は90年代の終わりに東京農工大学工学部の電気電子工学科に入って、最初はニューラルネットワークの工学応用をやっていました。3年生の時にインターンでSEをやってこのままSEになっていくのかな、という感じだったんですけど、何となく脳研究をやりたいという気持ちはあって。ただ、当時僕は脳研究といったら医学部だと思っていたんです。でもいろいろ調べていた時、友達が「脳の計算理論」(川人光男 著、産業図書1996年)という本を教えてくれた。すごく個性的な本で「脳を作ることで理解する」岡田 知久, M.D., Ph.D.ユニットリーダー
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