CBS Magazine vol.6
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■ 理研CBS−トヨタ連携センターで行う、これからの研究「理研CBS−トヨタ連携センター第5期では、『個人と集団のWell-beingダイナミクス』をテーマに掲げていますが、今後の研究について教えてください。」「具体的に、どの脳領域がシンクロするのですか?」■ 共感・共鳴、コミュニケーションを深掘りする「他者とシンクロすることが『共感していいですよね』では終わらない場合もありますよね。悪用できるというか…私たちは同期していると心地よくなって、その先まで考えずにその手前で幸福感を覚えているのではないかと…」でとても役立っています。睡眠の研究は面白かったのですが、「fMRIと脳波を使った実験ができるなら、生理学研究所で研究しないか」とお誘いいただいて定藤規弘先生の研究室に移り、fMRIを2台使って2人以上の脳活動を同時に記録・解析するハイパースキャニングfMRIとよばれる手法で、コミュニケーションの脳活動を研究し始めました。振り返ってみると、僕は「これが知りたいです」と宣言してずっとそれだけ研究するタイプじゃなくて、「これをやって」と言われればその研究に没頭出来るタイプだなと思います。子どもの頃、図鑑を読むのも歴史も実験も大好きだったように、大体のことに興味を持っています。今思い返しても、過去にやった研究が今はもうつまらないって思うこともなくて、どれもまたやってみたいですね。コミュニケーションをとおしてのWell-being、社会のWell-beingというのが理研CBS−トヨタ連携センターのテーマの一つになっており、僕にはそれをハイパースキャニングfMRIで解明することが期待されていると思っています。これまでのハイパースキャニングfMRI研究で何が分かったかというと、2者でコミュニケーションしている時、コミュニケーションで重要な役割を果たす脳領域において、脳活動のパターンが実験時のパートナーとシンクロ(同期)するということです。それは、実験課題によって違います。ヒトの目は、他の動物とは違って白目が大きいのが特徴です。白目が大きいと、目の動き、視線の方向が分かりやすいため、視線は社会的手がかりとして重要な役割を果たしているのではないかと考えられています。このような視線の重要性もあり、今までやってきた課題の中で一番多いのは、視線を介したコミュニケーションの実験です。2人の被検者さんで協力しておこなう課題なのですが、2人それぞれ別のfMRI装置の中で、寝ながらモニターに映っている相手の顔を見合います。画面には同時に4つの絵が出てきて、被験者さんの1人は一つの絵を選んで視線を向けます。パートナーは相手の視線を追って同じ絵に視線を向け、最終的に2人は同じ絵に視線を向けます。このような共同注意は、言語習得や発達において重要と考えられています。この時、個人の脳活動自体も非常に活発になるのですが、右前部島皮質とそこにつながっている右下前頭回とよばれる脳領域の活動パターンは、パートナーの活動パターンとシンクロしていました。これら右島皮質−下前頭回は、互いの行動を予測する役割に関連しており、「わたし」と「あなた」が、「わたしたち」になるメカニズムに関係していると考えています。確かにそれはそうですよね。共鳴するとか共感するとかという話をすると、みんないいところだけ考えがちですよね。いい影響を与える、いい影響を受ける、というところです。でも、ネガティブな面も沢山ある訳です。不機嫌そうな人がいたら、僕もその人に引き込まれて不機嫌になる時もあります。「もう死にたい」みたいな人にみんな揃って引き込まれたら、とんでもないことになりますよね。ですから、共鳴や共感は、それそのものはハッピーなことだけではないと思います。また別の例ですが、ウサイン・ボルトが世界記録を出

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